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木村農園 木村重佳さん

木村農園 木村重佳さん

Photo/Saori Kojima
Text/Ayako Futatsuya


 真っ白で、細身で小ぶり、形はバラバラ。食べてみると、ちょっぴり辛い。江戸東京野菜のひとつ「亀戸大根」は、こんな個性を放っています。江戸東京野菜とは、江戸時代から東京地域で栽培されてきた伝統的な野菜のこと。現在、江戸川区内で唯一、亀戸大根を生産している木村農園の畑は、この季節は大根の葉で青々と染まっています。

「もともと、江戸東京野菜のことは知りませんでした」と話す同園の木村重佳さん。かつて出版社で編集者として働いていた木村さんは、「将来的に文筆をやりたかったんです。『畑やりながらならできるかな~』って(笑)」と、実家の農家を継ぎました。2007年に亀戸の老舗「升本」に依頼されことがきっかけとなり、亀戸大根を作ることに。ところが、まず試作をしてみると、収穫された大根はなぜか黒みを帯び、味も苦い。その時の季節は夏。亀戸大根は高温に弱いのが原因でした。「大根からの警告だったんでしょうね(笑)。“正しい時季に作れ”って、抵抗していたんだと思います」。現在は秋から春にかけて月に4000本ほど収穫され、同園の直売所での販売のほか、升本に卸したり、江戸川区や江東区の学校給食に使われたりしています。

木村農園 木村重佳さん特集


 同時に木村さんが力を入れていることは、「ファーム・スイート・ファーム」と名付けた体験農園。20世帯を超える家族が年間を通じてさまざまな野菜を育てています。「土を触るのが楽しみで、『ここへ来ると生き返る』って言っている方もいます。利用者さんの桃源郷のような存在でありたいですね」。そして、まだまだ認知度が高いとは言えない江戸東京野菜を知ってもらう機会にもなってほしいそう。2020年の東京オリンピックで、選手村の食事の食材として江戸東京野菜を使ってもらおうとする動きもあり、これからますます脚光を浴びそうです。

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 農業に従事するかたわら、当初志した通り“藤谷圭一郎”名義で作家としても活動する木村さんは、処女作『VILLAGE』(銀の鈴社刊)を2015年に出版。「実は、次の作品は亀戸大根のファンタジーを書き終えたんです」と、まさに木村さんにしか書けない原稿の存在を明かしてくれました。「物語って、自分の中にあるのではなく、外側にあるものなんです。僕はそれをたまたまキャッチして、書いただけ」。木村さんが亀戸大根に見た物語は、味と一緒で“ちょい辛”なんだそうです。

※記事内容は2017年2月時点のものです

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木村農園
木村農園
住所 〒133-0073 江戸川区鹿骨1-28-20MAP
電話 03-6638-7945
営業時間 営業時間/10:00~17:00
定休日 土・日・祝日定休
その他 ※直売所は季節によって取り扱い商品が異なります