Photo/Saori Kojima
Text/Satoko Nemoto(Sawa-Sawa)
ガラス張りの店先で、ゆっくりと回る石臼製粉機。目を凝らすと、蕎麦の実が落ちてくるじょうごを、小さな猫の人形が支えています。「地名が猫実だから」と笑うのは内田信法さん。都内3カ所の蕎麦店に18年勤めた後、奥様の千穂さんと『蕎麦うらやす信や』を開いて3年半になります。
ざる蕎麦を注文すると、大鍋に1枚分の蕎麦を放り込んだと思った途端、ざるに上げて氷水の中へ。その間わずか30秒ほど。蕎麦の実の緑色がほんのりと残る茹でたての蕎麦を、カツオ節の香りが立つつゆですすると、つるりとしたのど越しがたまりません。「粉に水を入れて、玉にして、切って、茹でるだけ。蕎麦は簡単だけど、奥が深い」と内田さん。おいしい蕎麦の条件は、挽きたて、打ちたて、茹でたてとされますが、「粉の挽き方、割り粉の分量、つゆの材料でも味が変わります」。だから、蕎麦を粉の状態で仕入れる店が多い中、内田さんは蕎麦の実から皮を外した抜き実を仕入れ、1日に使う分だけを挽いています。
「品質は茨城県産の『常陸秋そば』がいちばん。でも、生産地にこだわるより、そのときのいいものを使っています。産地によって粘り、香り、水分量などが違うし、同じ生産者でも時期によって質が違うんですよ」
内田さんは蕎麦の状態を見極め、のどごしのよい食感を出すために細かく挽きます。ただし、細かく挽くとのびやすくもなるそう。「夏はほぼ十割ですが、冬は温かい蕎麦が多く出るので、0.5割ぐらい割り粉を入れています」
一枚板のカウンターには座り心地のいい椅子が置かれ、奥には子供連れでも気兼ねなく過ごせる座敷を用意。メニューには、蕎麦と同じぐらい人気の天ぷらをはじめ一品料理が揃っていて、お酒を飲みながらゆっくりしたくなります。
「焼酎のボトルを入れて、ひとり静かにお酒を楽しみ、締めにお蕎麦という方がけっこういらっしゃいますよ」と話すのはサービスを担当する千穂さん。「ゆっくり召し上がってほしい」というふたりの気持ちが、居心地のよさを生んでいます。
※記事内容は2016年2月時点のものです
住所 | 〒279-0004 千葉県浦安市猫実5-12-8 DMビル1F MAP |
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電話 | 047-321-4737 |
営業時間 | 11:30~14:30、18:00~22:00(L.O.21:30) |
定休日 | 第1・3月曜定休、火曜の昼定休 |
その他 | アクセス/浦安駅西口より徒歩5分
メニュー/ざる蕎麦700円、海老と野菜の天ざる1600円、たけのこ焼き1000円 ※カード可 |
【エリア担当/shin】
開店当初は奥さんに苦労をかけた、と語る信法さん。今では飲食店の方から「信やさんは美味しい」と耳にすることもあり、お店の前に人が並ぶことも。夫婦二人三脚でこれからも美味しいお蕎麦を作り続けてほしいです