Photo / Saori Kojima
Text / Ayako Futatsuya
春が来たら桜が咲く。それはごく自然なことのようですが、じつは桜だって、いつまでも自力で美しい花を咲かせられるわけではありません。
江戸川区内には、約1万5000本もの桜の木があるといわれています。その桜たちを保全しているボランティア団体『えどがわ桜守』のメンバーのひとり、伊藤房代さんは活動を始めて6 年ほどになります。桜の根元の保全に、害虫のチェック。桜が元気かどうか、いつも見守っています。
「人の都合で雑に桜の枝を切ると、思った以上に桜にダメージを与えてしまうんです。桜にとっていい切り方をして負担を減らしながら、人にも危害がなく安心して桜を見られるよう、うまく共存していくことが大切だと思います」。故郷の岡山でも美しい桜に囲まれて育ったという伊藤さん。幼い頃から桜が大好きだったということもあり、桜への思いやりは人一倍です。
伊藤さんは2年前から、北小岩小学校の児童に桜の授業もしています。「人間だけが生きているのではなく、光合成で二酸化炭素を取り入れ、酸素を作る木々や植物と一緒に生きているということをみんなに伝えたいんです」。授業では学校に5種類の桜があることを教えたり、花数調査をしたり。ときには、子どもたちから気付かされることも。「この間はね、『桜はなんで春に咲くんですか?』って質問した子がいたんです。私はすぐには答えられなくて。相手のことを知る生き方が大切なんだと、改めて感じました」とほほえみます。
小岩に来て40 年。気取らないこの町が好きだと言う伊藤さんは、地域の公園環境を保全する「おひさまクラブ」というボランティアグループにも所属しているそう。花壇に新しく花を植えては持って行かれたり、生えかけた芽を踏まれてしまったり…。「諦めないでやり続けるしかありませんね」と、絶えない苦労にも前向きです。
「桜の花って、ひとつのつぼみの中にいくつあると思う?」。伊藤さんがふくらみかけのつぼみをひとつ手に取り、丁寧にほぐして中を見せてくれました。そこには春の訪れを待つ、健気で小さな小さな花が4つ、5つ。「人生と一緒。寒く厳しい時期があったからこそ、キレイな花が咲くんです」
桜の名所として名をはせ始めた江戸川区。一人ひとりが桜を心にかけることができたら、もっと美しく咲き誇るかもしれません。
※記事内容は2016年3月時点のものです
その他 | 毎週日曜に北小岩二丁目第二児童遊園などの緑地の保全活動を行っています。また2016年4月2日(土)、3日(日)の2日間で、『2016全国さくらシンポジウム in 江戸川』が江戸川区で開催。 |
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【編集担当/don】
「桜守だけではすべての桜に手をかけることはできません。町に住む一人ひとりが身近にある桜の木に目を向けることで保全につながるんですよ」と笑顔で話す伊藤さんが印象的でした