すっきりと粋な「江戸扇子」をおしゃれの小道具に
「扇子は日本発祥の道具で、もとは儀式に使われていました。江戸に広まったのは町人文化が発展した元禄以降じゃないかな」と話を聞かせてくれたのは、「扇子工房 まつ井」の松井宏さん。華やかな京扇子は骨が35本ほどもありますが、江戸扇子の骨は15~18本ですっきりしていると言います。「江戸扇子の骨が少ないのは倹約の精神。無駄を省いた形が粋でおしゃれなんですね」
江戸扇子は1 万円台~2 万円台前半が主流
骨が少ないといっても、江戸扇子の製作工程は30 以上あり、伝統的にひとりの職人がすべてをこなします。扇面は2枚の表紙の間に芯紙を加えた3枚で1セット。3枚を貼り合わせて蛇腹に折り目を付け、余分な紙を裁ち落としてから、芯紙を2層にはがすようにして中央に骨を通します。扇面の両端を支える親骨を温めて内側に曲げると、扇子を畳んだときに両側から締まって美しい形に。こうしたこまかい心配りはまさに職人技です。
扇面に折り目を付ける工程。表紙の絵や柄は扇面絵師や加工師が手がけます
芯 紙を2層にはがすように骨を通す部分を開けます
親骨を温めて内側に曲げる工程は、10本ほどの扇子をまとめて行います
江戸扇子の職人はわずか数人が残るのみ。多くの伝統工芸と同じく後継者不足が悩みです。「この仕事がなくなることはないので、ぜひ継承してほしいですね。私も命ある限りはやっていきます」と松井さん。次世代へ望みをつないでいます。
京扇子とは違う 江戸の粋を 感じてください、と松井さん