Photo/Miharu Kimura
Text/Ayako Futatsuya
「本日朝採れたてのお野菜で~す!」。新浦安の駅前広場に響きわたる声。グリーンのテントの下に青々とした葉物野菜や立派な根菜が並ぶと、あっという間に人だかりができます。浦安観光コンベンション協会がこの場所で主催するマルシェには毎日さまざまなお店が参加していますが、「山武の新鮮野菜 鬼平」が出店するのは、毎週木曜日の朝11時から。普段は農家を営む店主の安田智洋さんは、「お客さんの9割くらいが、顔を見たことがあるリピーターの方。皆さんに支えられてやっています」と目を細めます。
安田さんは約50組の有機農家が集まる組合「山武野菜ネットワーク」に所属し、自宅のある八街市や山武市で無農薬による野菜作りをしています。「毎日すべての畑を回って作物の世話をしてます。今朝も朝5時に眠い目をこすりながら収穫してきましたよ」と笑います。もともと老人ホームなどの施設で調理師をしていた安田さんが農業の道を志したのは、東日本大震災が起こる少し前のこと。「無謀だとは思いましたが、千葉の農家に弟子入りして6年ほど修業し、一昨年独立したんです」。農業はただでさえ重労働ですが、いっそう手間のかかる無農薬にこだわるのは、強い想いがあるから。「おいしいものが好きなんです。でも、前職の調理で使っていたのはとても新鮮とは言えない野菜ばかり。作っていても楽しくないし、おいしくもない。そこで、“じゃあ、自分で作っちゃおう”と思いました」
もうひとつ安田さんが胸に抱いているのは、消費者の意識を変えたいということ。「日頃自分たちが口にするものだから、野菜がどういうふうに作られているのかを知り、考えてほしいですね」と話します。ただ、手間ひまがかかる野菜だからこそ、どうしても生まれるのは値段とのせめぎ合い。「直売がいちばん安くできるので、手に取ってもらえる価格でがんばっています」と苦労をにじませます。
ところで、店名を聞いて「あれっ?」と思った人もいるかもしれません。市内入船にある割烹料理「鬼平」はお父様のお店で、そちらのお料理にも安田さんの野菜が使われているそう。「一度食べていただければ、味の違いがわかってもらえるはず」。安田さんの愛情が込もった自慢の野菜は、どれもびっくりするほどしっかり濃厚な味。そして同時に感じる優しい甘さが、食べることの幸福感とありがたさを思い出させてくれます。
※この記事は2018年11月20日現在のものです
住所 | 〒279-0012 千葉県浦安市入船 MAP |
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営業時間 | 毎週木曜のみ営業 11:00~15:00 |
その他 | ※なくなりしだい終了
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