Photo/Kenji Nakata
Text/Ayako Futatsuya
柔らかな光が射し込む大きなガラスブロックの壁や、かつてタバコを売っていた時代を想像させる小窓。建物の古い記憶をかすかに残す「はんぶん堂」は、オーナーの上泉龍一さんがDIYで商品棚などをしつらえた、温かな雰囲気のお店です。取り扱うのは、ハンドメイド作品や文具。「昔からここを知ってる人には、ずいぶん変わっちゃったね~って言われたりしますよ。だけどね、ずーっと前は文具屋さんだったみたい。その後何代か替わって、今はまた、僕が文具をやってるの」と、上泉さんは不思議な縁に目を細めます。浦安駅から歩いて10分ほど。この2月で、オープンからちょうど1年が経ちました。
大手文具店でバイヤーや店舗勤務を長年経験し、勤めあげた上泉さん。入社当初はクラフト部門に所属し、革に彫刻を施すお仕事をしていました。そのときに身につけた技術は今も健在で、実はこのお店も「最初は、革彫刻をするための工房にしようと思ってた」そうです。その作品を売る場所も…という不動産屋さんの助言もあって、作業場を兼ねた店舗にすることになり、「それなら、革だけじゃなく文具も」と、はんぶん堂が誕生しました。「今はどこでも文具が買えちゃうので、できるだけその辺のお店で置いてないおもしろいものを探しています」。上泉さんがセレクトした文具は、デザイン性の高いものやアイデア商品、懐かしいロングセラー品など、眺めているだけで心がくすぐられるものばかり。
店内に並ぶハンドメイド作品は、開店前に通った「うらやす起業塾」の同期や、たまたま通りかかった近所に住む作家さんなど、浦安と縁のあるものが多いそう。「都内で偶然見かけて気に入った作品の職人さんも、浦安でも展示会をしてたし、共通の知り合いもいて。本当にビックリしちゃった!」と、思わぬ“浦安つながり”に興奮気味の上泉さん自身も、この町に住んで25年ほど。お店の経営を通して、どんどん輪が広がるのを感じているそうです。
「自由に立ち寄れる、社交場みたいになればいいなと思ってます」と、数カ月前からカフェもスタート。「作業場をつくるはずが、最終的にコーヒーまで出して。欲張りだよね」なんて笑いますが、「今年の目標は古物商の資格の取得。今後は、オリジナル商品も作りたい」と、やりたいことはまだまだたくさん。上泉さんが“欲張り”でいてくれる限り、はんぶん堂はおもしろくなりつづけそうです。
※この記事は2020年3月20日現在のものです