バス通りから少し入った堀江の住宅街で、70年以上前から営業する駄菓子屋「重兵衛商店」。笑顔で迎えてくれたのは、2代目の店主・内田朋子さん。「戦争へ行ったお父さんの帰りを待ちながら、祖母が生き抜くためにお嫁さんである私の母と始めたお店です」
朋子さんが幼少期の頃から、お店は大繁盛。現在は、なかよし街公園となっている向かいが当時銭湯で、お風呂上がりに立ち寄るお客さんで毎晩24時くらいまでにぎわったそう。「アイスキャンディーや牛乳、コーラなどが売り切れてケースが空っぽになったほど。浦安は50年くらい前まで漁業が盛んな町でしたから。浜から上がった漁師たちや、貝むきの仕事をしていた女性たちが子供を連れてまず銭湯へ、という生活が日常だったんです」
お店にまだチャイムがない時代。浦安の子供たちは「かのねー!」と大きな声で言いながら入店。店の奥の住まいに居る朋子さんに「買うねー!」という声かけだったそうです。「最近は、スーパーやコンビニ主流の時代なので、挨拶をする子供が減って少し寂しく感じます。でもね、扉の開け閉めができてなかったり、ゲームを乱暴に扱ったりしたときには、口うるさいと思われても注意するようにしているんですよ(笑)」
そんな朋子さんが店主になって50余年。きなこ棒やあんずボー、ふ菓子、もろっこヨーグルトなど昔ながらの駄菓子から、ポテトフライなどの新商品まで150種類以上がずらり。見えやすく、手に取りやすい陳列に愛情が感じられます。「棚は子供目線の低めにしています。最近は、週末に親子で訪れるお客さんが多く、手作りした棚を持って来てくれたりして助かっています」。店先には、ジャンケンマンゲームやメダルゲームなど、10円から楽しめる昭和感漂うゲーム機も現存。懐かしさのせいか、夢中になって遊ぶ大人の方も多いというのも納得です。
またこちらは、1993年に刊行されたギャグ漫画『浦安鉄筋家族』に登場する、駄菓子屋「はなくそ一発」のモデルとなった店。今年9月までテレビ東京系列で実写版が放映され、ロケ地としても使用されたことから注目度がアップ。遠方から訪れるファンも多い。地域の小学校の社会科見学にも毎年協力しているそう。「浦安は、昔から人と人とのつながりが深い町。うちにも3世代にわたって通われるお客さんも多くいます。生まれたばかりの赤ちゃんを抱いて遊びに来てくれたりすると、長くお店を続けてきてよかったな、と思います」