やさしい温かみのある織物の前でやわらかな笑顔で迎えてくれたのは、江戸川区伝統工芸会に所属している染織作家の篠﨑小百合さん。白い絹糸を植物由来の染料で染め、反物を織る染織の世界の魅力をお聞きしました。
「私は工芸染織という、染めと織、両方を行う作品を作っています。まず図案や自分の中のイメージをもとに糸を染めて行きます。思い通りの色に染まったときや、制作で残った糸を組み合わせて、縞模様を考えるときは、色鉛筆で絵を描くように糸を選べておもしろいです。染色が終わると、糊付け、糸巻き、整経など、機織りは織る作業の前がとても時間がかかるんです。とても骨が折れますが、それぞれの工程で五感を使って考えている時間はあっという間で、苦ではなく、むしろ楽しいです。そして織る時間は無心になれることも機織りの好きな所です」
所属する江戸川区伝統工芸会では、ほかの作家さんから、素材や技法などを学ぶこともあり、刺激を受けるという篠﨑さんですが、どのようなきっかけで染織を始めたのでしょうか。
「子供の頃から美術や音楽が好きで、デザイン系の学科がある工業高校に入りました。そこで染色や織物に出合い、さらに学びたいと友禅染めと織が選べる専門学校へ。伝統工芸だけでなくテキスタイルデザイン科もある学校で、最新のデザインにも触れることができてとても刺激になりました。また作品を通して言葉以外で人とつながれるという喜びも知りました」
卒業後は学校の講師でもあった先生の工房で、3年間住み込みで学び、その後6年間母校の講師をしながら制作活動を続け、子育て期間は活動を控えていましたが、最近では、活動の幅を広げて、さまざまな取り組みをしているそうです。
「年に1回、江戸川区伝統工芸展に作品を出品したり、近所の『Cafe&Studio Petitgrain』や、同じ伝統工芸会の会員で、友禅作家の草薙惠子さんと一緒に、アトリエスペースで春と秋に作品展示と染め物のワークショップなどのイベントを開催しています。実際に体験をして染めや織の楽しさを知ってもらって、自分でもなにか染めてみようかなと思っていただけたら嬉しいです。そして、このイベントが地元の人たちとの交流の場になればいいなと思っています。これからは、ほかの作家さんとアイデアを出し合い、織った生地でシャツやスカートを作ったり、自分のブランドで商品も作っていきたいです。また、江戸川区で採取した材料での作品作りもやっていきたいですね」