Photo / Saori Kojima
Text / Hiromi Onda(Listen)
昭和31年創業の『鶴の湯』は、千鳥破風2段構えに懸げ魚ぎょも入った寺社建築風で、見事な風格の銭湯です。脱衣場は格天井、大黒柱のある漆喰の壁は昔のまま残っています。この歴史ある銭湯を毎日丁寧に手入れしているのが、2代目の中山光雄さん。
昔は風呂がある家も少なく、近所には銭湯が8軒もあったそうです。「私が継いだ頃、周りが1軒、また1軒と廃業する中、仕事を教わる間もないまま先代である家内の親父が亡くなってしまってね。うちもダメだろうと近所から心配されました。私も素人だったからね」。当時は配管もわからず、床下に潜って構造を調べたことも。「わからないからがんばれたんです。まずは一生懸命やるしかなかった」。独学で働く中、年配の方に喜んでもらおうと薬湯をつくるとそれが評判に。その後、「自分が銭湯をやっている証しを残したい!」と思い、当時銭湯になかった露天風呂を造ろうと考えました。「温泉には露天風呂がつきもの。銭湯にあったらみんなきっと入りたいはず」。その夢が15年前に実現し、「当時、お客さんが3倍にも増えて、驚きました」。男女それぞれにある湯船は10人でもゆったり入れる広さ。「造るなら大きいほうがいい。だってお客さんが喜ぶじゃない」とくったくなく笑います。
江戸川浴場組合・小岩地区だけで60軒近くあった銭湯も今は13軒。組合長を務める中山さんは、もっと多くの人に足を運んでもらおうと、仲間とともに楽しい企画を進行中です。なかでも、12月31日まで開催する「ぶらり ゆらり スタンプらり~」は評判がよく、市川や松戸、大阪から参加する強者もいるとか。「最近は高校生もレトロでかっこいい!なんて言って友達と来ますよ」。銭湯は健康にもいいし、風呂の中ではいろんな人と交流もできる。銭湯文化を守るためにも、「鶴の湯を自分の代で終わらせたくない」と言う中山さん。「世代交代も考えますが、銭湯には定年がないでしょ。だから、元気な限り私が守っていきたいですね」
※記事内容は2015年11月時点のものです
住所 | 〒133-0051 東京都江戸川区北小岩7-4-16 MAP |
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電話 | 03-3658-5378 |
営業時間 | 14:50~23:45 |
定休日 | 水曜 |
その他 | ●アクセス /京成小岩駅1番出口より徒歩7分
●入浴料金/大人460円、中学生300円、小学生180円、幼児無料 |
【編集担当/don】
開店と同時に、町の至る所からお客さんが集まる鶴の湯。心地よいお湯に、優しい笑顔の中山さん、番台のおかみさんのぬくもりが詰まった、まるで町の止まり木のような銭湯です。寒い季節は銭湯でゆっくり温まりたいですね