Photo/Saori Kojima
Text/Hiromi Onda(Listen)
農家の10代目であり、農林水産大臣賞の受賞歴を持つ真利子伊知郎さんは、小松菜発祥の地・江戸川区で30年以上小松菜の生産に携わってきたプロフェッショナルです。農業を始めて以来大切にしてきたのは、江戸川の土。土壌消毒は一度もしたことがありません。「雑草には悩まされますが、その方がおいしくて体にいい小松菜ができますから」
真利子さんの畑の周辺は、昔海だった場所です。土壌には塩分も含まれていて、日によって潮風を感じることもあるのだとか。「その塩と冬の寒さが小松菜の甘みをよりいっそう引き出してくれるんです」
そして採れたての小松菜を1束、「食べてもらえば、味の違いがわかりますよ」と手渡してくれました。オススメのおひたしでいただいてみると、たしかに驚くほど甘い!葉は肉厚でやわらかく、シャキシャキした茎の食感もたまりません。
現在、江戸川産の小松菜は市場でも評価が高く、百貨店をはじめ全国に出荷されています。その半面、区内で購入できる場所は少ないのだとか。真利子さんは「もっと地元の人にもこの小松菜の味を知ってもらいたい」と毎週土曜日に直売所を開いています。開店前には行列ができて、150束用意した小松菜が30分ほどで売り切れることも。「おいしいという声を直接聞けるのは嬉しいですし、作り甲斐もあります。区外から来る方や、1週間分をまとめ買いするお客さんもいますよ」
東京都農業経営者クラブの会長も務める真利子さんは、区内産の小松菜を「江戸川野菜」として幅広く知ってもらおうと尽力しています。ブランド化のためオリジナルの結束テープを作ったり、江戸川区、弘前大学と協力し、生食用の「サラダ小松菜」も開発しました。
江戸川区に住みながら地元の農業のことを知る人はまだまだ少ないのが現状。「区民にとって誇れるものと尋ねられたとき、誰もが小松菜だと口にしてくれるようになったら嬉しいですね」。まっすぐに将来の夢を語る真利子さんの目は、優しくほほえんでいました。
※記事内容は2015年12月時点のものです
住所 | 〒133-0043 東京都江戸川区松本2-16-3 MAP |
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電話 | 03-3652-5495 |
営業時間 | 土曜10:00~(売り切れしだい終了) |
その他 | アクセス/新小岩駅より瑞江駅行きバスで鹿本橋下車徒歩3分
料金/小松菜(1束)100円 |
【編集担当/osa】
小学生の社会科見学では「小松菜、カブやキャベツなどアブラナ科の野菜の共通点」を尋ねると言う真利子さん。その答えは春には花が咲くこと。今春の小松菜の花はどんな風に咲くのかな?見に行ってみたいと思います